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2018年9月1日[土]→24日[月]/山形県郷土資料館 文翔館、山形市七日町シネマ通り、東北芸術工科大学
プログラムディレクション
東北芸術工科大学が主催し、山形市で2年に1回開催する現代アートのフェスティバル。3回目となる2018年秋も、国の重要文化財「文翔館」をメイン会場とし、9月1日から9月24日までの週末13日間にわたって開催した。2018年のテーマは「山のような」。東北の暮らしと地域文化への、深い共感や鋭い洞察から、現在の山形を表す(=山のような)作品を提示すること。そして、この芸術祭の制作過程において、山形の過去・未来に光をあてる創造的なアイデアや協働をたくさん(=山のように)生み出していくことを目指した。
招聘アーティスト:荒井良二、いしいしんじ、大原大次郎、川村亘平斎、空気公団、坂本大三郎、spoken words project、寺尾紗穂、トラフ建築設計事務所、ナカムラクニオ、野村誠、ミロコマチコ、茂木綾子、森岡督行、山フーズ、WOW、和合亮一、石巻工房、前田エマ、沖潤子、皆川明、三谷龍二、福森伸、三瀬夏之介、シソンヌじろう、原田郁子、他
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2000年代に入ってから、全国各地で大規模な芸術祭が開催されるようになりました。横浜や名古屋、札幌といった大都市だけでなく、中山間地域の町や村、小さな島々をつなぐ、広域連携で開催され、大成功を収めているケースもあります。
私自身も、いくつかの芸術祭に関わり、ひなびた漁村や、耕作放棄地が目立つ里山に、人々がアートを鑑賞するため、波のように押し寄せるのを目撃してきました。また、廃校や空き家に展示された現代アートの巨匠たちの作品に、心震えるような感動もおぼえてきました。
新潟で開催された越後妻有アートトリエンナーレから、全国に伝搬した地域密着型芸術祭は、現在も各地で芸術祭を生み出し続けています。とりわけ人口減少に苦しむ自治体にとっては、観光促進や地域づくりの施策として効果的です。
しかし、先端事例になっている国際芸術祭の規模はあまりに巨大で、開催費用も数億、自治体の首長が号令一下で… となると、草の根から起こしていくのは難しい。私も、そうして山形で悶々としていた一人でした。
他地域の祝祭を眩しく眺めながら、空きビルや温泉地で、学生たちと手づくりのアートイベントはじめたころ、〈適者生存〉という言葉に出会いました。つまり、“虎は世界中で絶滅に瀕しているが、ウサギは世界中で繁栄している”ということです。山形県立博物館で見たトウホクノウサギの剥製は、野性的な顔つきをしていました。 それをきっかけに、「背伸びして、人口100万をこえる自治体と同じことを目指してもしょうがない。コンパクトで持続可能な、私たちらしい芸術祭をつくろう」と考え方を大きく変えました。
全国には、山形市くらいの自治体のほうがはるかに多いのだから、この規模で面白い状況がつくれれば、アート・デザインによる地域づくりや、地方で活動したいクリエイターたちの選択肢が増えるだろう、と。山形出身の絵本作家・荒井良二さんと出会ったのも、同じ頃です。 山形ビエンナーレは、他地域で生まれた巨大芸術祭のレガシーに学びつつも、その定型的なイメージにとらわれることなく、「山形でどんな芸術祭をつくれるのか」を、毎回、試行錯誤するスタイルをとっています。
芸術監督の荒井良二さん曰く「(山形ビエンナーレは)みんなで芸術のお祭をつくってみる壮大なワークショップのようなもの」は、今回で3回目。山形での暮らしと旅を愛しみながらのトライアルは、街の風景を着実に変えています。地域の草の根を駆けるトウホクノウサギたちの芸術祭。ぜひ山形で体験してください。 (プログラムディレクターメッセージより転載)