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掌編2:〈東京と変身〉2022年10月29日-30日
掌編3:〈わたしのこもりうた〉2023年1月7日
会場:東京芸術劇場シンフォニースペース
プログラムディレクション/編集
東京芸術劇場と制作した多文化空間をめぐるリサーチプロジェクト「〈東京と変身〉他、影絵掌編」は、2023年の東京・池袋に生きる海外ルーツの人々をとりまく風景と物語を、当事者たちと共同制作する影絵で表現し、伝えていく試み。掌編1〈ニュー・トーキョー・アラベスク〉は、ムスリムコミュニティと協働した非公開の作品だったが、その後も池袋界隈でのリサーチ過程で出会った支援団体や教育機関と2本の掌編を制作した。
掌編2〈東京と変身〉は、日本での就職・就学を目指して語学学校に通う、中国・台湾・韓国など主に東アジア出身の若者たちの影絵アンソロジーである。東京芸術劇場で2日間の集中ワークショップを開講し、〈変身〉をテーマに彼ら自身の今の姿を影絵人形に切り出してもらった。
劇場や語学学校の関係者も招き入れた2日目夜の発表会では、舞台中央に吊るしたスクリーンに、参加した14名が異形の影となって次々登場。川村亘平斎が演じる狂言回し役の猿からの、「なぜそのような姿になったのか」という問いかけに応答する掛け合い形式で、一人ひとりが自身の東京物語を影絵で表した。
燃える壺、怒れる虎、震える心臓、猫が変化した岩山、同じ顔をした魚群、半島と列島を往復する鯨… 東京で〈変身〉したというその姿は、言葉の壁をこえて日本社会に飛び込んだ海外ルーツの若者たちの不安と希望をビジュアライズし、そのリアルな心象をスクリーンに映し出した。
掌編3〈わたしのこもりうた〉では、東京で出産し育児に奮闘するミャンマー、ベトナム、タイ、中国出身の母たちのインタビューを影絵化した。
タイトルの“こもり”には子守りと篭りの、2つの意味を重ねている。出稼ぎによる家族離散、異文化での子育て、海外ルーツ母子としての戸惑いと孤立、祖国と日本の歴史問題にクーデター、そしてパンデミックと、困難な背景や状況を抱えながらもたくましく生きる家族たちのナラティブ・ストーリーが、それぞれの故郷を象徴する樹々(パダンやゴールデンシャワー)の根元で語られる。
「彼女らはかつての私」と、妊娠による解雇に傷ついた技能実習生に寄り添うベトナム語通訳者。軍事クーデターをきっかけに東京に根付くことを決意したミャンマー人母子。タイの山村に幼い自分を置いていった実母を追って18歳で来日し、自身も日本で3児の母となった女性。
来日した経緯も、出産や子育ての状況も異なる彼女たちだが、その物語はいずれも祖母・母・私という3世代にわたる人生のリレーのなかで語られ、スクリーンの“向こう側”の観客席で、父親の膝で影に魅入る次世代へと継がれていった。異次元の少子化に突入した2023年。これからも、こうした聞こえにくい声、見えにくい家族や若者たちの物語に傾聴していく。そこに未来はある。
企画・構成:宮本武典
影絵と音楽:川村亘平齋、嶺川貴子
サポート・出演:ホーティー・バン、ユン、佐和、レナ、チン・ヨウ、イェ・チャオチェン、リ・カ、ゼン・キンエツ、謝璐宇、デン・シャンシャン、ソウ・シエイ、ハサナ、オウ・ギョクレイ、キョウ・ショテン、チョウ・エンシュク、リ・イセン、シン・シセイ、カ・キンゲン、イ・ジェリョン、チョウ・タン、王皎令、齋藤里咲、佐野ちあき、宍野凜々子、張藝逸、小山彩花、新井ひかる、松本知珠、柏木俊彦、関根好香、他
企画協力:NPO法人Mother’s Tree Japan、学校法人香川学園メロス言語学院
参与観察:楊淳婷
撮影記録:志鎌康平、河内彰
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場/東京都
宣伝美術:樋口舞子