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ブルーノ・ピーフル + 根岸功「化生」
2016年2月3日[金]→22日[水]/KUGURU
キュレーション/アートディレクション
化生(けしょう)とは仏教用語で、化けること、化身、バケモノ、妖怪の類を指す語であるが、仏や菩薩が人として顕れる場合にも用いられる。人でも獣でも、精霊でも仏でもない霊的な者たち。死んでしまった者が転生するまでの、中間的な存在のこと。
山形県大石田町の陶芸家ブルーノ・ピーフルさんの窯は、それ自体が巨大な芋虫のような異形だが、背後の暗がりにうず高く積まれていた失敗作に、僕はまさに「化生」を、見た。
森に突き出た2本の煙突の根元に、窯焚きの高熱に耐えられず、歪んだりヒビが入ってしまった三十余年分の陶器や彫像たちが層を成して、ゆっくりと土に還っていた。土が炎とはげしく戦い、破れた、欠損と煤だらけの姿。僕はむしろその奇形ゆえに、陶器であることや作者の意図をこえた何かが、宿っているように思えた。
僕はすぐさま、展示の構想をはじめたが、灰かぶりの陶器たちは素焼きのものも多く、長年の湿気その他の原因で脆く割れやすくなっていた。またブルーノさんは一度失敗作と決めたそれらを、「作品」と称して公に展示したり、値をつけたりすることを望まなかった。そこで、静物撮影の技術において信頼を寄せている写真家の根岸功さんに依頼して、写真作品として窯の化生を捉え、展示する計画をたてたのだった。
11月、窯が雪に埋まってしまう前に、ブルーノさんと僕は窯の背後に潜り込んで、煤だらけになりながら、撮影するものを発掘し、選別した。それら奇妙なゴーレムたちのことを、ブルーノさんは「友」と呼ぶ。屋根裏や敷地のまわりにも、まだ膨大な数の「友」がいて、鼠や蛇やミミズたちの棲家になっている。「はじめて外の世界にでるから、夜になったら、あなたの部屋のなかを這い回っているかもね」と、ブルーノさんは髭を撫でながら笑った。(展覧会によせた文より)