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TAKENORI MIYAMOTO / Portfolio

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「new born 荒井良二 - いつも しらないところへ たびするきぶんだった」展

「new born 荒井良二 - いつも しらないところへ たびするきぶんだった」

巡回会場:横須賀美術館、千葉市美術館、刈谷市美術館、いわき市立美術館、宇都宮美術館 他
企画協力:朝日新聞社、積水ハウス株式会社
制作サポート:TIMBER COURT

キュレーション

2005年に日本人として初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞したアーティスト荒井良二(1956-)。その幅広い活動は、絵本だけでなく、絵画、音楽、舞台美術にまでおよぶ。そんな荒井良二の「いままで」と「これから」を紹介する大規模個展「new born 荒井良二 - いつも しらないところへ たびするきぶんだった」で、メインとなる立体インスタレーション《new born 旅する名前のない家たちをぼくたちは古いバケツを持って追いかけ湧く水を汲み出す》のキュレーションを手がけた。
約50の“名前のない家たち”を中心に構成される本作は、積水ハウス株式会社の協力を得、同社の新築施工現場で分別された約コンテナ3杯分の廃材を使って制作された。着想のもとになったのは、東日本大震災の発生直後に、荒井が雑誌『SWITCH』の特集「世界を変えた3日間、それぞれの記録 2011.3.11-13」誌面に掲載した、絵画《無題.3.11》である。その絵では、子どもの顔と車輪をつけたたくさんの“家のようなもの”が、燃えるような赤と黄色を背景に、画面の右から左へと駆け抜けており、ページの端にはこんな手書きのコメントがあった。

 テレビを見て東北のことを知って、言葉がでなかった。
 ただ、逃げろ逃げろと言っていた。 (抜粋)

東日本の沿岸部を襲った大津波と原発事故から13年が経った。しかし今も世界には災害や戦争、疫病や暴力から逃れるため、終わりの見えない旅を続ける子どもたちがいる。3.11の絵から飛び出し、家の廃材で組み立てられた“名前のない家たち”のキャラバンは、あの日から揺らぎ続ける私たちの世界を表象しながら、日本各地をめぐっていく。小さな家々にはよく見ると、それぞれに小さな男の子や女の子が住んでいて、それぞれの物語を生きているようだ。
「new born 荒井良二 - いつも しらないところへ たびするきぶんだった」展は、2023年夏の横須賀を皮切りに全国各地の公立美術館を巡行中である。各美術館では市民対象のワークショップを開講し、50の“名前のない家たち”に名前と物語が与えられる。本作は、そのようにして行く先の街に暮らす人々と物語り・読み聞かせる、大きな参加型の絵本であり、新しいフォークロアである。

記録撮影:池田晶紀、志鎌康平、廣田達也