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[山形展]
東根市公益文化施設まなびあテラス特別展示室
2020年9月12[土]→11月8日[日]
[東京展]
森岡書店
2020年8月31日[月]→9月6日[日]
クリエイティブディレクション/編集
1972年に25歳で夭折した山形県天童市の詩人・赤塚豊子は、小児麻痺で手足の自由を失いながら、十代の終わりに詩と出会い、タイプライターで66編の作品を遺した。死後、その詩は彼女の早すぎる死と才能を悼む人々によって愛唱され、詩集や詩論が出版されている。
書籍と展示『テヲ フル〓〓ワシテ カイテユク』では、書家の華雪が、山々に囲まれた豊子ゆかりの土地を訪ね、その遺稿とのコラボレーションを試みた。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会の延期、そして新型コロナウイルスのパンデミックにより、誰もが〈それ以前〉とは異なる日常を生きることになった2020年。半世紀前に、自室の小さな世界から生と死を見つめた豊子が、文字盤に打ち込んだ一文字一文字と向き合いながら、亡き詩人の心像に迫る。
主催:まなびあテラス/共催:森岡書店/装本:heso
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「ひと頁に、ひと文字」
四肢が不自由な豊子さんが、カナタイプライターのひと文字に託した思いを、どうすれば〈書〉で表現できるか? 華雪さんの字体への深い洞察を頼りに、対話を重ねてきました。その結果、ひと頁にひと文字のみ、それらが積層して1つの詩を成すという造本に至りました。
330枚の紙束からなる「テガミ」を、ひと文字ずつめくる。カタカナの詩は読みやすくはない。しかし、その〈めくる〉所作と筆致と意味とを根気よくつなぎながら、〈理解しようとする〉ことの先に、赤塚豊子という人のほんとうの身体と思考が立ちのぼってくるのではないか? という、この本はひとつの仮説です。
そして本書ははじめ、東京パラリンピック2020にあわせて出版されるはずでした。しかし、コスモポリタンたちが歓喜したはずの真夏の東京はパンデミックの渦中にあり、誰しもが〈それ以前〉とは異なる日常を生きはじめています。
「ワタシハ ナゼ コンナアテモナイテガミヲ カイテイルノダロウ」。
豊子さん、あなたの呟きが50年の時を経て、ひと文字、ひと文字、いま切実に、私たちに近づいてくるのを感じています。(出版・展示によせて)